「テグさんが涙を流した後……」
遠藤航、リオ五輪からの再スタートとシンプルな答え
開幕間近。遠藤航が語る、対戦国の特徴と、日本代表のストロングポイント
久しぶりになってしまいました、遠藤航です。
「久しぶり」の理由はご存じの通り、僕にとって大きな目標のひとつであったリオデジャネイロ・オリンピックがあったからです。
長い一カ月だったなと思います。いま思うと、いろいろなことがありました。
正直に言えば、モヤモヤとした気持ち――この正体は焦りだったのですが、それが負けた日から一週間くらい続いたと思います。
リーグ戦もあったので切り替えなければという思いを持っていましたが、なかなか難しい時間でした。
気持ちが整理されたいま、あの頃のことをちょっと振り返ってみたいと思います。それは、とても有意義な時間でもありましたから。
最後のミーティング
8月11日。ブラジル、サルバドール。
グループリーグ敗退が決まり、翌日すぐに帰国することになった僕たち日本代表のメンバーがホテルの一室に集まりました。選手だけでなく、監督やコーチ、スタッフみんなと最後のミーティング。
テグさん(手倉森監督)が話をしながら涙を流します。これまでずいぶんとお世話になった監督の涙に、泣いている選手もいました。実際、監督の話にはグッとくるものがありました。
チームとして一番大事にしていた初戦のナイジェリア戦に負けた後のミーティングで、「逆境に立たされたな。でも我々は逆境を乗り越えて結果を残してきたチームじゃないか(ユース年代ではアジア予選で敗れ、チームとしても谷間の世代と言われてきた)。この逆境、自分たちらしいな!」と話し、「次に勝って、グループリーグを突破しよう」とポジティブな姿勢を崩さなかった監督。
そんな監督が人目を憚らず涙を流しているのに、胸を打たれなかった選手はいなかったと思います。監督は言いました。
「これからはA代表を目指してほしい」
その言葉は、きっと選手たちの胸に刻まれていると思います。
監督の話が終わると、僕の番でした。ミーティングはいつも僕が音頭を取って締めることになっています。手拍子も決まっていて、僕が「タンタタタンタン」と手を叩くと、みんなが「タンタン」と手を叩く。これが決まりでした。
ただ、このときは監督と目が合ったこともあり、「航、最後だから一言話したらどうだ」と目で訴えられたような気がしました。でも……。
僕にはできませんでした。